(新)風邪だと思ったんですが。悪性リンパ腫闘病記

風邪だと思って病院に行って出された診断結果は『悪性リンパ腫』そこから始まった血液のがん、抗がん剤治療、副作用、不安な日々との闘い。 そんな私とその家族の日々を書き綴ります。

抗がん剤治療5クール目 その5

『悪性リンパ腫』の抗がん剤治療を開始して半年。その間は私は病院。家族は家という生活が続いている。車で10分ほどの距離なのにずいぶん遠く感じる。そんな日々。

 

この日は朝から厄介事が。

 

珍しく朝早くから携帯電話が鳴った。なったと言っても他の患者の迷惑にならないようにマナーモードでもなく、サイレントモードにしている私はそれに気付いた。

 

電話の相手は子供だった。

 

私は電話を持ってそのまま病室を後にした。他の患者の迷惑になるので病棟の外のソファに向かった。携帯電話は切られることなくずっと着信中の表示になっている。

 

ソファに腰を下ろし『もしもし』と言うと、子供は泣きながら私に何度も『パパ。パパ。パパ。』と言う。その度に私は『なに。なに。なに。』と繰り返す。入院してからこの半年で何度目かの子供からの泣きながらの電話。この時点では何で泣いてるのかも何で電話をしてきたのかも分からない。

 

『どうしたの?』私は出来るだけ優しい口調で何があったのか訊きたいのを必死に抑えながら言う。

 

『ひくひっく。』子供は嗚咽を漏らしながら必死に泣くのをこらえようとする。

この必死に泣くのを抑えて、私に何かを伝えようとする子供に胸が激しく締め付けられるような思いになる。

 

『どうした。何があったの。』私は子供を諭すように落ち着いた口調で話しかける。

 

『あのね。ひっく、ママがね、ひっく・・。』子供が必死に伝えようとする。

 

『ママがどうしたの?』私が訊く。

 

『ママにね、怒られた。』子供はそう言うと一気に泣き出した。子供なりに必死にその思いのたけを伝えたのだろう。

 

『何で怒られたの?』私が訊く。

 

『ゲームしたら行けないって言われた。』子供が言う。

 

(あ~なるほど。)この時点で何で子供が泣いているのかも妻が子供を怒ったのかも大体の合点が言った。

 

子供が言っているゲームというのは今流行っている『マインクラフト』というゲームで先日私たちは病院と家で離れて暮らしているので何とか一緒に出来ることはないかと、子供と探してやり始めたゲームだった。

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どんなゲームかというと子供の頃にやったブロック遊びや積み木遊びをTVゲームでやるようなゲームだ。土を掘ったり、木を切ったり、切った木で家を建てたり、畑を作ったり、家畜を育てたりと工夫次第で色々な箱庭遊びのようなものが出来るゲームだ。

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今はインターネットというものがあるので離れた場所でも一緒に楽しむ事が出来る便利な時代だと思う。病院に居る私と自宅にいる子供と一緒に話ながらゲームを楽しむことが出来る。

 

こんな別々の生活になってしまって子供には本当に寂しい思いをさせてしまっている。

 

しかも、私が入院している病棟は血液内科なので感染症予防の為に子供は立ち入り禁止なのだ。だから子供と会う機会は本当に限られ私の体調が良くてしかも、抵抗力が高い状態でないと会えない。

 

その為に始めたのが『マインクラフト』通称『マイクラ』だった。

 

でも、そのマイクラが妻に怒られてもう出来ないと子供は泣いている。子供の話を引き続き訊くと子供がやるべきことをやらないのにゲームばっかりすると妻は怒っているらしい。それはごもっともな話だと思った。

 

でも、この時はまだ朝の6時。妻は連日の疲れでまだ寝てるのは明白だったので妻が起きたら電話するように子供に伝えて電話を切った。

 

『はぁ~。』大きなため息を廊下のソファーの上でつく。そして天井を見ながらもう一度溜息をついた。

 

一緒に住んでいればこういうまどろっこしい事も無いのになぁ。子供の気持ちも分かるし、妻の言い分も分かる。

 

朝食後に妻から電話がかかってきた。話を聞くと子供が部屋の片づけや、言う事を聞かないのにゲームをしたいという。でも、もう少し融通がきいても良いんじゃないのかなという部分もあった。

 

子供とも話をして、妻ともよく話した。結局は、やる事やってからゲームはするという事になった。

 

当たり前の落としどころ。

 

早い話がみんな余裕が無くなっているという事だった。今までも何度もあったし、これからも何度もあるだろうと思う。離れて暮らす。しかも命に関わる病気で。見えない将来。これが『悪性リンパ腫』という病気の副作用だとも思う。

 

家に帰りたい。一緒に居たい。

 

病室のベッドに戻り、見慣れた天井を見ながら大きなため息をついた。

 

最後まで読んでいただいてありがとうございました。感謝いたします。