(新)風邪だと思ったんですが。悪性リンパ腫闘病記

風邪だと思って病院に行って出された診断結果は『悪性リンパ腫』そこから始まった血液のがん、抗がん剤治療、副作用、不安な日々との闘い。 そんな私とその家族の日々を書き綴ります。

抗がん剤治療6クール目 その③ ある青年との出会い

『悪性リンパ腫』の抗がん剤治療も6クール目になり、考える事、感じる事も多岐にわたった。もう、この病気の事はあんまり考える事は無いのだけれど・・・。

 

私の入院を待ちわびていたもの。

 

6回目の入院をして昼頃、私の病室を一人の患者仲間が訪れた。

 

『〇〇さん、お久しぶりです。』そうニヤニヤしながら挨拶するのは、私よりも20歳近く年が若い青年だった。

 

彼も私同様の血液の病気で入院している患者の一人だった。初めての出会いは私がこの血液内科に入院してから3か月くらいたってからの事だった。抗がん剤の副作用での味覚異常や吐き気、病院食が食べれなくなったりしていたので、私はこの頃から食事の時間は病室から血液病棟内の談話室に逃げ込むようにしていた。

 

そこで、一人体格が良い青年が大盛りのカップ麺を美味しそうにズルズルと食べていた。全く食欲が無かった私がその彼の姿を見て、カップ麺が食べたいと思えるほどに実に美味しそうに食べていた。

 

『美味しそうに食べるねぇ~』それが私が彼に掛けた最初の言葉だった。

 

『はい。ここのごはんだけじゃ足りないっす。』それが彼が最初に返した言葉だった。

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この会話をきっかけにこの青年との交流が始まり、お互いの病室を行き来したり、一緒に売店に行ってお菓子を買ったりしながら、多くの事を語り合った。

 

彼の年は20代の中頃。私が言うのも何だけど、こんなところに居るべきではないと思った。ずっと、プロのスポーツ選手になりたくて大学まで、そのスポーツを続けていたらしい。彼が患った血液の病気が彼のその夢を断つ原因の一つになったことに私も言葉を無くした。

 

家族の話や仕事の話、将来の話、食べ物の話、男と女の話、ゲームの話など、私とは父親と息子でもおかしくないほど年が離れた二人は、本当にいろんな話を語り合った。

 

『俺は〇〇君の事を息子とも、友達とも。後輩とも、仲間とも思っているよ。』と言う私の言葉に彼は目頭を熱くして『ありがたいです。』そう言いながら涙を流してくれた。

 

彼は本当に頑張っている。痛い治療もきつい治療も耐えに耐えて、私の前では脂汗をかきながら『大丈夫っす!』と言ったりする。

 

『無視しなくていいよ。辛いのはみんな一緒だから』と私が言うと、

 

『正直辛いっす。』といって苦笑いする。

 

お互い1クール1クールの間の退院期間はLINEでやり取りをしたり、お互いが入院したりした時は必ず病室に挨拶を交わした。この6クール目も私が後から入院したので彼が挨拶に来てくれた。

 

彼は今回の治療で治療が終了するらしい。正直羨ましかった。

 

私が入院してしばらくして彼が永かった治療も終わり退院をしていった。今までも、患者仲間との別れというものは幾度となく繰り返してきたけれど彼との別れは、いつもの別れとは違っていた。

 

彼が頑張っているのは十分、分かっているのだけど。

 

頑張って欲しい。

 

そう願った。

 

私も『悪性リンパ腫』と言う病気を患っていて正直、いつまで生きていられるのか、いつ死ぬのかも全く分からない状況ではあるけれど、私の中の何かで彼のこれからの人生が光り輝くものになるのであれば私の寿命の何十分の1、何百分の1を分けても良いと思う。(何分の1は家族の為に苦笑)

 

そして、彼の退院の日。

 

私の病室を彼が彼の母親と尋ねてくれて『〇〇さん、今度は外で会いましょう。美味しいご飯食べながら。』そう言いながら笑顔で嬉しそうに出て行った彼の姿を見て嬉しくも寂しくもなった。

 

この世の中のどこかに彼を見ている特別な力があるのであれば彼により多くの幸あれ。そう願った。

 

彼が退院してから2週間後、私は大好きなベビースターラーメンを売店に買いに行った。しかし、いつもは棚いっぱいに詰め込んであるベビースターラーメンがこの日は無かった。

 

がっかりしながら、病室に戻るとその両手にいっぱいの飲み物とベビースターラーメンを抱えた彼の姿があった。

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『お久しぶりです。』そう言いながら笑う彼の笑顔に私は何とも言えない嬉しい気持ちになった。

 

こんな病気になって辛い事、悲しい事、痛い事いっぱいあるけれど、人との出会い、ものの考え方、新しい感情。色んな事に触れられるようになった事には感謝したいと思う。

 

感謝。

 

そう、何が変わったかと言えば感謝することが増えた。

 

今日と言う日に感謝。

 

最後まで読んでいただいてありがとうございました。感謝いたします。